2 真倫高校


 私立真倫高等学校。
 その学校に吹く風は潮の匂いがするかもしれない。きっと、おそらくは、海が近くにあるのでしょう。
 だけど、そこに通う生徒たちはその海の近さに慣れていない。大半の生徒がそんな風を受けることははじめてなのである。それでそのまま、その風との付き合い方が解らないまま高校生活を終えたりもする。
 親元から離れて寮で暮らし始めた生徒などはそのこと以外にも驚くことはあるのだし、すこし遠くから電車で通う生徒もそれに近いようなことはある。だから、春は一段と風が強かろうが、いちいち構っていられないのである。
 そして、急に気づく。
 その風の匂いに。
 最初は少し嬉しかったり。そして、うっとおしくなったり。また冷たくなったり、寂しくなったり、切なくさせてくれる。喜ばせてもくれる。そのときの気持ちに合わせ、色々に感じさせる。そして三年間などあっという間に過ぎてしまう。
 いつか、懐かしくなって、また風を受けに来る。風が思い出させてくれる。風は全部知ってくれていたありがとう。となる。涙、誘う。
 真倫高校は私立真倫大学の直の付属であるので、生徒の九割強がそのまま、エスカレーターに乗る。だから、学校の授業は受験のためにでない。「学ぶ意欲」、「基礎学力」の向上。大学で授業を受ける知識、さらに、その先の社会に出てからのことについてなどに比重が分けられている。行われる行事も三年生もがしっかりと参加をする。大学へいくまでのつなぎでなく、学校の空洞化と言わせないことを目指しているわけである。
 それは無論、大人たちである教師がである。
 生徒はそんな事より大事なことがある。
 ホントの自分が知りたい。自分には何ができるのか。その可能性を知りたい。また、友達との関係にも悩まされる。仲良くしてはいるけど、ホント嫌い。愉しくないんだもん。ううん、でも一人にはなりたくない。けど厭なことばかりでない。親友にめぐりあえたのなら、それはとても貴重なことで、競い合ったり、助け合ったりする。
 そして、恋をしたりする。
 素敵な素敵な恋をする。すれ違うだけでドキドキして、目が少し合うだけでもう大変。話すことができたのなら、なんて幸福。青春である。
 私立真倫高等学校。
 そこで出会った人たちは、何が待っているのでしょう。