15 シマ模様


 卒業式の前々日、生徒会の面々は体育館で、その行われる式の準備に追われていた。
「どう曲がってないよね?」
 体育館の壁に紅白の幕を飾る作業をしていた竹清にみゆきが壇上から聞く。校旗を飾っ
ているのである。
「大丈夫だ」
 作業の手を止め、竹清が返答する。
「で、この後は?私たちもそれ手伝う?」
「いや、校歌の練習。先に始めてよ」
 そういうと、竹清はみゆきの返事をまたずに幕を飾る作業に戻った。
 みゆきは竹清の本気を察知し、さらに伴奏のピアノを自分が弾くべきなのだろうな、と
判断もする。
「じゃ先やってようか」
 と、同じ壇上にいる亜季と繭子にみゆきは促すことになる。
 そのみゆきの弾き始めたピアノが体育館に響き渡る音に、竹清と洋介とは反対側から、
幕を飾る河本と綾の二人も手を止めて壇上を見た。脚立に乗って作業をしていた河本は、
一度床に降り、ピアノを弾くみゆきを見て、幕の作業をする竹清を見た。それで作業に戻
ろうとした。
 そんな河本の一連の流れを目の端で追っていた綾は、そばにあった締め切ってある体育
館のドアを開けてみた。その開ける動きに気づいた河本はそっちを見た。
 と、同時に入り込んで来た風が綾のスカートを捲り上げた。
「キャ」
 驚く綾の、今日の青と白のストライプの柄を河本は確認した。
「まったく。もう、」
 そのイタズラな風は綾にすぐドアを閉めさせた。
「なんか一人騒わがしくって、ごめんね」
 綾は幕の端を河本に渡すときに言う。
「いえ、そんなことないです」
 本当に河本は綾の騒々しさが気になると言うことはなかった。
「河本くん、さ」
 綾はさっきの河本の、みゆきと竹清をみた目の動きが気になって、それについて触れて
みようと思った。
 が、どう聞いてみたら良いのか判らなくなって、
「今、私のパンツみたでしょ?」
 パンツを見られたことなど、別に気にならない綾であったが、思わず話をそっちに持っ
ていってしまった。
「はい、見ちゃいました。」
「フフ、あー、河本君に見られちゃった。」
 素直な反応の河本に可愛げを綾は感じた。
 体育館のドアが開き、顧問の平井が入ってきた。
「結構順調のようね」
 平井は顧問として、準備の進行具合を見に来たのである。
「はい」
 河本は返事をする。
「手伝うわ」
 そういって、そのまま平井は河本と綾の幕飾りを手伝った。三人でやればペースも上が
ろう。
「先生って、背大きいですよね?河本君くらいある」
 作業の合間に、並んだ平井と河本に綾がいう。
「そうね、でも河本君はこれからもっと伸びるでしょ?」
 河本を見て平井は思ったことを口にした。
「あ、先生、それ微妙にセクハラっぽくないですか?」
 綾は茶化してみる。
「別にそんなつもりで言ったんじゃないんだけど。気にする?」
 あせりもせず、落ち着いている平井は、河本に聞いた。
「いえ」
 閉口気味になってしまう河本であった。 
 幕を飾り終えると、役員全員で校歌の練習をした。
 竹清が声張って引っ張ってくれるから、皆、声を出し歌いやすくしてもらった。
 それが、予行、そして、本式である卒業式でも、他の生徒に伝わり、その場に居たとい
うだけでなく、きっちりと式に参加をしていたという気持ちにさせた。
 生徒会として卒業式にできる貢献はしたのである。